体験記(3)

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中国おもしろ事件簿(3)

 
中国の「おこも」さん

わたしは(日本の)中国山地の奥深い村で生まれました。貧しい村でしたが、そんな村にも「おこも」さんたちがやってきては、玄関先で物乞いをしておりました。「おこも」さんというのは「こも被り」からきた言葉らしいですが、なるほど当時かすかな記憶を思い起こしてみてもコモを被っていたような覚えがあります。
一時はなりを潜めていたこれらの人々は、最近の長引く不景気のせいでまたまた巷に見かけるようになりました。
日本のおこもさんと中国のおこもさんとはどう違うのでしょうか。

最近は政府の指導で鉄道駅の周辺に乞食の集団を見かけることは少なくなりましたが、上海でもまだいろいろな街角で見かけます。中国の乞食についての噂はいろいろありますが、未確認なので、ここではわたしが見たことについてお話しましょう。

わたしたちが住んでいる上海古北新区は外国人が多く住んでいるところです。そこに「家楽福」といスーパーマーケットがあります。昨年日本にも進出してきたフランス資本の「カリフール」ですね。その周辺に彼らはならんで「仕事」をします。
その様子は日本で見かけるそれとほとんど同じで変わるところはありません。できるだけ同情をひくように松葉杖をついたり、自分の不自由な身体を顕わにしたりしてしきりにアピールをします。

ある日のことです、わたしは子供たちを連れて「家楽福」に買い物に出かけました。いつものように彼らがならんでいる通りを歩き過ぎていきます。そしてこれまたいつものように彼らはいくらかのお金が入った鉢をわたしの前に差し出して物乞いをします。毎日のことですから、こちらもいちいち相手をしているわけにはいきません。
スーパーで買い物をして出口に出たときにはすでに5時を回っていました。買い物袋をぶら下げて帰ろうとするとき、わたしは一組の人物に気づきました。おばあさんと孫娘といった感じの二人組みです。先ほどの通りに二人座って道行く人々に鉢を差し出していた彼らです。彼らは嬉々としてスーパーマーケットに入ろうとしているところでした。
そうです、彼らも「一仕事」終わって、帰りがけに夕食の材料を買い求めようというのでしょう。言っておきますが、このスーパーマーケットはスーパーとはいいながら街中の露天商とくらべるとかなり値段の高いところです(ただし、品質はいいですね)。そこで買い物をしようというのですから、ひょっとしたらわたしよりも懐が暖かいのかもしれません。
物乞いをして帰りに高級スーパーで買い物をする。なかなかうまみのある商売のようです。

また、別の機会には、彼らの中でも威張りくさっている初老の男がいましたが、彼が携帯電話でしゃべっているところも見ました。最近の乞食は携帯電話を持っているのだと感心したことです。(妻によると、どうやら彼はこのショバのボスらしいとのこと。なるほど・・・)

噂によると(ほんとか嘘か知らないといういいかげんな話ですが)、彼らは組織で働いているのだと聞いたことがあります。会社組織かどうかは知りませんが、一種「組合」的な組織なのでしょう。ひょっとしたら給料制か、歩合制なのかもしれません。少なくとも、日本で考えるような貧しい人々という考え方は当てはまらないと思います。時には小道具(例えば、障害児など)を時間借りでそろえたりして人々へのアピールをしているという話もあります。

というわけで、中国へ旅行されて、そういう場面に遭遇したら、彼らはわれわれの想像以上に金持ちだということを思い出してください。

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